年が明けて、エネルギー価格や物価と値上げ、値上げの動きが止まらない日々でございます。
我々消費者は、その高騰に頭を抱える日々でございますが、その悩みは、企業側も同様でございます。
今回は、ここ数年盛り上がりを見せている新電力事業についてみてみたいと思います。
日本の電力に関するエネルギー事情の全体感については、下記も参照くださいませ。
関連記事:日本のエネルギー事情(電力編)
新電力事業の概要
いつものとおり、事業の全体的なお話からでございます。
一般家庭へ電気の小売業の、いわゆる新電力事業については、2016年の全面的な電力自由化が端を発しております。
簡単に歴史を振り返っておくと、もともと、電力の販売は、地域の電力会社(東京電力、中部電力、九州電力等)のみが、供給=販売できる状態でございました。
それが、1999年、2003年の電気事業法改正により、地域の電力会社の他、特定電気規模事業者においても、オフィスビルや工場で扱う特別高圧(契約電力量が2000kW以上)や高圧(契約電力が50~2000kW)電力の販売が許されるようになりました。
そして、2016年の全面的な電力自由化によって、一般家庭やコンビニ等の小規模事業者といった、低圧(単相かつ契約電力が50kW未満、三相かつ契約電力が50kW未満)を取り扱うところに対しても販売が許されるようになったわけでございます。
さらに、電気の販売についても、法人や個人、資本金などの制限も設けない形でだれでも小売電気事業者になり、販売が可能になりました。
このように、電気事業法改正により、誰でも電気を販売することが可能になり、また、これまで地域の電力会社のみが供給可能とされていた販売先についても、段階を経て、全ての小売電気事業者に開放されてきたと、このような経緯をたどってきているわけでございます。
出典:電気とガスのかんたん比較 エネチェンジより
これにより、従来、我々一般市民は、基本的に自分が住んでいる地域の電力会社としか契約することができなかったのですが、電力の小売業を営んでいる会社・個人であれば、どことでも契約できるようになったということでございます。
例えば、東京に住んでいる人は、従来で規則でいえば、基本的には東京電力としか契約できなかったのですが、「自分は地元が福岡だから、九州電力(九電みらいエナジー)と契約しよう!」といったことが可能となるわけですな。
エネルギー事業は、社会インフラの側面が強いため、専門の事業者以外は、中々市場に入りづらく、どちらかというと寡占的な状態ではありました。
これが、電力自由化により、市場を広く開放することで、新たな事業者の参入を促し、それによる市場競争効果が働き、結果としてユーザーに対して安価な価格での電力の提供や新しいサービスモデルの創出などが促進されることになったということであります。
新電力事業の市場規模
さてそんな新電力事業ですが、次に気になるところは市場の規模でございます。
一般社団法人エネルギー情報センターによると、高圧・低圧全ての電力における電力市場の規模は、2021年12月時点で約1.2兆円ほど言われております。
その中で、従来の地域の電力会社による市場規模、いわゆる「みなし小売り」とよばれるものと新電力の市場規模の内訳をみてみると、
- みなし小売り:約9千3百億円(約77.5%)
- 新電力:約2千8百億円(約22.5%)
といった形になっております。
そして、登録されている小売電気事業者の数はというと、資源エネルギー庁の調査によると、開始時の2016年4月時点では291件の登録があり、2021年9月時点では729件にまで推移しているといった状況でございます。
出典:「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について」より
急速に撤退する小売電気事業者
さて、昨年の年末までは右肩上がりで推移してきた新電力の小売電気事業者でありますが、ここ数か月で状況は一変します。
帝国データバンクによると、2021年度の新電力事業者の倒産数が、過去最多となる、1年間で14件に到達したことが報告されています。
電力の全面自由化が開始されて以降、年間1~2件の倒産数だったものが、ここ1年間で急速に増えてきております。
出典:帝国データバンクより
昨今のエネルギー価格の急騰によるもので、電力の調達コストが膨らみ、収益を大きく圧迫したことが原因とされています。
事業者の対応策は?
まだ事業を継続している事業者については、料金の値上げや新規契約受付の取りやめるといった形で、対策をしている状況であります。
しかし、料金の値上げは、大手電力事業者との差別化ポイントであったところを薄めてしまうものであります。また、消費者によっては供給力の懸念により、地域の大手電力事業者と契約をするといった選択肢も出てくるものと想定されます。
これを踏まえると、昨今の価格上昇に耐えられない事業者が今後も出てきて、新電力事業者の倒産数も増えていくのではと予想されます。
すぐに今契約している事業者が倒産して、電力が供給されなくなるといったことが起きる可能性は少ないですが、家計という面においても、ご自身が契約されている電力会社の動きについては、ウォッチする必要があるところかと思います。
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ということで、本日はここまで。
この記事がみなさまのお仕事の一助になれば幸いです。
それでは今日もお疲れ様でした!